研究室紹介

研究室紹介

 薬物学研究室は1954年に初代鵜上三郎先生(1954~1963年)が立ち上げられ、薬理学や毒性学分野を源流として半世紀以上にわたり薬物代謝学、薬物動態学、薬剤学領域での研究を中心に著名な先生方を輩出した伝統ある研究室です。2022年4月より秋田英万教授の後任として薬物学研究室を引き継がせて頂くこととなりました。身の引き締まる思いです。これまでの伝統に恥じぬよう、研究教育の発展に尽力する所存です。OB・OGの諸先輩方におかれましても、今後一層のご指導ご鞭撻を賜れば幸いです。

 現在がん治療において、免疫チェックポイント阻害剤やCAR-T細胞などがん免疫療法が臨床で使われはじめ、従来の治療法では完治が困難な病態にも効果を発揮するなど、大きな期待が寄せられています。

 また、新型コロナウイルスによる感染症は世界規模のパンデミックとなっていますが、ワクチンは発症や重症化の予防に大きく貢献しています。特にmRNAワクチンは従来の概念を打破し驚異的なスピードで開発されました。この成功の要因の一つはドラッグデリバリーシステム(DDS)です。DDSの一つである脂質ナノ粒子(Lipid nanoparticle: LNP)が効率的なmRNAの細胞への送達を実現しています。

 このように、免疫治療や細胞治療、DDSを含めた核酸医薬、さらにはウイルスベクターを用いた遺伝子治療など新しい治療手段「New modality」が誕生しており、今後の創薬開発における重要性はますます大きくなっていきます。しかし、薬効や副作用発現のメカニズムは不明なことが多く、解決すべき臨床上の課題や問題は多く存在しますが、new modalityがゆえに基礎研究の面からのメカニズムの検証が十分進んでいないのが現状です。

 薬物は必要場所に適切な形で届けられて初めて薬効を発揮します。これは薬学では至極当たり前の原理原則であり、古くからある低分子医薬であっても、new modalityであっても変わりません。New modalityを中心とした次世代医薬について、薬物動態や薬物送達など「薬物」の体内や細胞内での動きや制御に焦点を当て、臨床における様々な課題や疑問の解決に資する基礎研究、臨床応用を目指した応用研究を進めていきたいと考えています。このような研究を通じて、次世代の創薬、new modalityに強い人材を育てていきたいと考えています。

 当研究室の研究に興味がありましたら、どのようなバックグラウンドの学生、研究者も歓迎いたします。見学なども含めて遠慮なくご連絡ください。